【共通問題 概況速報】
難易度:全体としてかなりの難化
東京都教育委員会が都立高校入試平均点の公表を開始したH15年度以降で最低の平均点となります。
5科合計の予想平均点は280点前後
(H15年度以降での最低値はH22年度の286.5点)
教科別に見れば「想定の範囲内の難易度」であったものの、ことごとく「想定される中で難しめ」の出題であったと分析しています。
自己採点をして落ち込んでいる受験生が多いと思います。
しかしながら、昨年度の平均点(307.3点)と比較すれば30点程度の低下が想定される出題内容であり、各校のボーダーラインも下がる見込みです。しかしながら、上位層では崩れないであろう教科(英語・数学・国語)が多く、上位校・中堅上位校のボーダーラインは下位校ほどには下がっていないと思われます。

英語:難化(予想平均点:49点)※H22年度以来の低水準
数学:難化(予想平均点:56点)※H25年度以来の低水準
国語:難化(予想平均点:70点)※2/25更新
理科:難化(予想平均点:47点)※平均点公表以来最低点の見通し
社会:昨年度並み(予想平均点:57点)※昨年度平均点は57.0点
※国語の予想は、「最後の設問が問題不備により全員に得点が与えられる措置」を反映しています。

【国分寺高校】
英語:易化
数学:例年並み
国語:例年並み

 

【共通問題教科別分析】

英語
昨年度の平均点は54.7点であったが、今年度は難化したと考える。
問題構成に大きな変化はなく、昨年同様の出題形式だったが、以下の理由で平均点の低下が見込まれる。
・リスニングで細部の正確な聞き取りが求められた
・難化した大問2での失点や時間不足
・英作文の設問を誤って解釈したことによる減点
以下、大問別に分析する。
大問1:難
リスニングは、細かい聞き取りが求められた。
対話文2では、誰がどこで何をするのかを正確に聞き取る必要があり、
対話文3では、時間の聞き取りでそれぞれ何を指しているか正確に理解しなければならない。
リスニングが得意な受験生でも満点は難しく、3~4問の正解数に留まった受験生が多いと予想する。
大問2:難
図表の読み取り問題は難化傾向にあり、今年も例外ではない。
正答を選ぶために必要な情報が対話文の最後に書かれているので、焦って回答すると失点する。
また、情報を一つ一つ積み上げていく作業が必要なため、想像以上に時間が奪われる。
時間をかけたのに得点できなかった、、となるのが、近年の大問2の特徴だ。
英語が得意な受験生でも失点する可能性があるので注意したい。
英作文は、「誰かのために良いことをしたことがあるか」という質問で書きやすかったように思われるが、Eメールの文脈で設問の解釈を誤る恐れがあった。設問に正しく答えられなければ、大幅な減点につながる。英作文を正しく書くだけではなく、設問の正確な読み取りが問われていることも忘れてはならない。
大問3:標準
英文は馴染みやすい内容で、設問も標準レベルだった。
下線部の指示語に注意し、前後の内容を丁寧に読めば正答を選ぶことができるが、設問の言い換えに注意したい。
本文の内容と違う表現が使われていることがあるため、英文の意味を正確に捉える力が求められる。
大問4:標準
難易度は標準レベルであるが、問2の本文の流れに沿って選択肢を並び替える問題が難しかった。
特に選択肢アの該当箇所を見つけるのが難しく、選択肢アとイの出来事が近かったため、この順序を混同した受験生が多かったかもしれない。他の設問のレベルは、標準レベルで特に難しいものはなかったが、大問2や3で時間を奪われ時間不足に陥った受験生が多くいたことが想定される。

数学
大問構成や出題形式、配点は例年と変わりなく、従来どおりの都立入試問題であった。
近年60点台の平均点が続いていたが、今年に関しては難化し、平均点は50点台となる見通しである。
その大きな要因として大問1の難化が挙げられる。また、大問2(証明)も近年の傾向どおり難易度の高い問題であった。どの層の受験生にも共通して、「大問1や各大問の問1での失点をいかに抑えられるか」が結果を大きく左右するテストとなった。
大問1の難化については、上位への影響はほぼない(難化したことさえ気づかない受験生も多いはず)。一方で、下位層への影響は、比較的あったはずだ。
以下、大問別に分析する。
大問1:難化
問題の構成は毎年変わらず、一見すると例年通りの出題で同程度の難易度にも見える。しかし、問題を詳細に見ていくと受験生がミスをしがちな問題が並んでいる。
問1・2は符号のミスを誘発する典型的な問題で、取りこぼしてしまった受験生も少なくないと思われる。
問3は平方根の計算問題で計算の順序にも気を付けたいところだが、普通に計算すると分母に根号が残るため「分母の有理化」が必要となる。根号の計算がおぼつかない受験生にとっては意外と苦戦する問題であったと言える。
問6の二次方程式の計算に関しても、左辺が平方完成された形での出題は近年見たことがなく、過去問題を中心に学習をしていた受験生は少し戸惑ったかもしれない。
問8の確率は一般的な問題にも見えるが、「a≧bとなる」がaとbの等しい場合を含まずに処理してしまったため、失点した受験生も多くいたと考えられる。
以上のように、「難問とまでは言えないが、小さなひっかけが随所にちりばめられた問題」が多かったため、例年よりは正答率が下がると思われる。いかに取りこぼさずに解けるか、見直しでミスに気がつけるか、が非常に重要な大問であった。
大問2:難化
近年、正答率の低い問題であることが定着しつつある大問。
例年よりも問1が難化したと言える。問1から問題文が正しく理解できないと正解が選べない問題であった。また、4択問題から完答式の問題に変更されたことも正答率を下げる一因となるだろう。
問2の証明は今年も難易度が高く、問題文の理解のみならず、計算及び答案作成に時間を要する問題であった。
大問3:標準
問1・2は正しく問題文の条件を読めれば、全く難しさの感じない例年通りの出題。
問3も例年通り上位の高校の受験生であれば正解を狙いたい問題だが、多くの受験生には手も足も出ない問題であったと言える。大問4:例年通り
問1は例年通り、aを使って角度を表す問題。円周角の定理が正しく使えることは求められるが難易度は高くない。
問2①は合同か相似の証明問題が出題されてきたが、初めて「二等辺三角形であること」を証明する問題が出題された。証明自体は難しいものではなかったが、合同と相似の証明を想定し練習してきた受験生にとっては大きなサプライズだったのではないだろうか。来年度以降の都立高校受験生は合同や相似の証明だけでなく、「平行四辺形であること」や「○○が等しいこと」などを証明する問題にも対応すべく準備が必要になったと言える。都立入試史上大きなターニングポイントとなりうる出題であった。
問3の問題は非常に難易度が高く、上位校の志望者でかつ数学が得意な受験生を除いて手を出さないことが正解だったかもしれない。
大問5:例年通り
問1で「ねじれの位置」を問う問題が出題された。今年はコロナウイルスの関係で試験範囲から「三平方の定理」が除外されていることが影響していると思われるが、この出題も都立高校入試で過去に見た記憶がない。落ち着いて数えれば誰にでも簡単に解ける易しい問題であった。しかし、慣れない問題だったためか、一定数の受験生に数え落としのミスが出たと思われる。

国語
問題形式に大きな変更はない。
総じていつも通りの読みやすい簡単な文章であったと言えるが、受験生の多くは本文そのものの難易度ではなく、「迷う選択肢がどれだけつくられているか」という点で得点が変化する傾向がある。その意味において、今年度は昨年度ほど楽に選べない設問が多いため、難化したと断言できる。
ただし、上位層では影響があまりなかったはずである。実際に当塾塾生の自己採点結果をみると、これまでの過去問題演習において安定して90点以上をとっていた生徒たちは入試本番でもしっかりと90点以上をとっており、85点以上の生徒数も決して少なくない。一方で、中位層で国語がやや苦手な受験生でいつも通りの得点を維持できなかった人が一定数存在していると思われ、中堅校の入試においては影響が出ていると推測する。
昨年度は、「みんな90点以上、悪くても80点以上」という、どうしようもなく「差が出ない」おかしな出題であったことを考えれば、今年度の難易度は入試問題として極めて良識的な「入試として機能する」水準であった。また、上位層が90点以上を維持していることからもわかるとおり、悪問・難問は特に見当たらない。
以下、大問別に分析する。
大問1・2 漢字
完全にいつも通り。当然、20点満点が求められる。
今年は特に読みの問題が簡単で失点した人はほぼいなかったのではないか。
大問3 文学的文章
本文はやや長いものの読みづらさはない。
設問は、上位校では全問正解者が続出する難易度ではあるものの、「どの問題も正答率90%程度」という簡単な年の問題とは異なり、迷わせるような選択肢がしっかりと作られていた。公立高校入試問題としては、非常に適正な難易度である。このような作問ができるのであれば、なぜ昨年度のようなことが起こってしまったのか改めて疑問を抱く。
大問4 論理的文章
本文は短めであり、扱われているテーマも身近で、一見読みやすい文章である。
しかし、ここが受験生の落とし穴である。なかなか「曲者」と言える文章だったのではないかと思う。筆者の主張にピンとこなければ、要旨を理解するきっかけを掴めないまま最後まで読み終えてしまうというケースが想定されるからだ。
設問自体は素直に選べるものが多く、上位~中位層が崩れることはないだろう。一方で、筆者の感覚に共感できないと要旨把握できない受験生、すなわちフィーリングに依存するタイプ受験生は結構失点したかもしれない。
大問5 対話文(現古融合)
いつも通り古文を読む必要はなく、現代語訳と照らし合わせるだけで対処する問題。
今年度は「かな遣い」の出題がなく、「修飾関係」を問う文法問題が出た。
「修飾関係」を問う文法問題も含め、これまでに繰り返されてきた出題パターンを踏襲する問題ばかりであり、目新しさは全くない。しかし、いつも以上に「読む力」が問われるようになっている。古文の該当箇所を選ぶ問題は、現代語訳の傍線部だけ読んでも対処できる「10秒で解ける問題」がこれまで多かったが、今年は前提として現代語訳を読解する必要があった。修飾関係を問う文法問題も知識ではなく読む力が問われる。難解な問題はなく、良問揃いである。テクニックや知識で解決するのではなく、一定水準の読解力を求める出題になっている。一見、何の変化もないように見える出題の中で、「読む力」を測りにいく傾向が出ている。この大問も上位層は全く崩れる要素がない一方で、読解力不足の受験生は点が取りづらく、得点差が適正に出る良問であったと言える。
(2月25日追記)大問5の問5について、複数の正答が想定されるということで受験生全員を正答扱いとして5点が与えられることになりました。「文法問題の形式ながら読解力を要する問題」として分析しておりましたが、「イ」でも「ウ」でも解釈可能という判断にいたったと推察されます。読解力のある国語の得点上位の塾生たちは概ね模範解答どおりの「イ」を選択しており、あまり不適切な問題とも感じませんでしたが、入試問題としては妥当な判断だと思います。「イ」と解答していた受験生にとっては、残念な決定でしたね。逆に「イ」でない人はラッキーでした。「ウ」以外の人も救済されるのはアンフェアな気もしますが、やむを得ない措置です。

理科
大問の構成は変わらず、大問1・2が小問集合、大問3以降は地学、生物、化学、物理と並んでいる。構成の変更点としては大問1が4年前と同じ6問に戻った点であるが、この変更は軽微であり、受験生にとっても、ほとんど影響のない変更であると言える。大きな変更点としては、完答式の増加である。昨年増加した完答式の問題がさらに増加し、今年は全体で11問となった。これは平均点を大幅に押し下げる要因となる。昨年以上に設問中の情報量が増加し、よく読まないと解けない問題や難易度の高い問題が多かった。理科としては、これまでになく時間に余裕のない試験問題となっている。
難化と完答式の問題数増加の影響により上位・下位を問わず全ての層で得点は下がっている。
以下、大問別に分析する。
大問1:難
例年であれば知識のみで判断できる問題が多く、時間の掛からない設問ばかりであったが、今年は例年ならば大問3以降で出題されていたような「実験結果から推察する問題」や「計算を要する問題」が増加した。
大問2:難
どの問題もレポートをしっかりと読みこむ必要があり、時間と労力を要する問題が多い。
問2の速さを求める問題は小学生でも解ける問題とも言えるが、cm/sをkm/hに単位変換する過程でミスをしてしまった受験生が多かったように感じる。
問3は実験を正しく読まないと処理できない難しい出題であった。
大問3:標準
天気の変化と気象観測に関する出題。求められる知識はごく一般的なもので、難易度としては高くない問題で構成されていた。
大問4:標準
光合成に関する出題。完答式の問題が増えたことと処理しないといけない情報が増えたことはあるものの、ごく一般的な対照実験の問題であった。
大問5:難
炭酸水素ナトリウムの分解に関する出題。テーマとしては一般的な出題である。
問1・2が完答式となり、部分的に正解が選べても、完答ができずに得点にならなかった受験生も多くいたと思われる。
問2は化学反応式に関わる設問であり、この大問で毎年必ず出題されている。しかし、今年は化学反応式を覚えているだけではなく、どんな種類の化学変化であるかということまで理解が求められる設問となっており、例年よりも正答率は下がる。
問3・4は表で書かれた実験結果を正しく読み取る必要があり、計算量も例年より増加したため難易度の高い設問だった。
大問6:難
電流と磁界に関する実験についての出題。
問1・2は一般的な出題内容であり、確実に正解したい問題である。
問3は抵抗器のつなぎ方によって電流がどのように変化するか理解できていた受験生にとっては簡単な設問だった。しかし、オームの法則を理解しているだけでは処理できず、かつ並び替え問題になったので正答率は低いと思われる。

社会
大きな問題構成・難易度の変更はなかったが、公民の出題範囲がコロナの影響で狭くなっていたこともあり、軽微な変更があった。大問1(小問集合)で歴史が1問増加、大問5(公民)が1問減少。
公民で頻出の「財政」「社会保障制度」が範囲外ということで、公民の出題内容が注目されたが、公民は全て簡単な出題でしかも問題数減少となった。公民での失点は考えづらく、差が生じることはない。地理は資料の読み取り等、例年どおりの出題形式だが、正答率はやや低いと予想する。歴史は例年どおりの出題・難易度であり、まさに「いつも通り」なのだが、例年正答率が低い分野である。公民の範囲が狭くなる中で、受験生が歴史の精度をどれだけ高めてきたかが問われる。歴史が弱い場合は、得点を崩した可能性がある。
論述問題は地理・公民で1題ずつと変更はなかった。地理の論述は書きやすく満点の答案が出やすい問題。公民の論述は書きづらかったはずだが、資料の一部を転記すれば部分点は取れるものであり、白紙にした受験生がいたとすればもったいない。下位層では、日頃から「書く」問題への抵抗感をどれほど克服しているかが問われる。
以下大問別に分析する。
大問1(小問集合) 易
地形図・歴史の基本知識(2問)・公民の基本知識(1問)
基本的には全問正解したいレベルの問題。歴史は地図が絡まない問題で極めて軽い。基本的な用語問題集をやっていれば、できないことは考えられない。それにしても、ここで世界遺産を出題するのが本当に定番化している。
大問2(世界地理) やや難
形式は昨年度からほぼ変わらないが、絞りにくい選択肢があると感じた受験生が多かったと思われる。旧宗主国などの基本知識を覚えたうえで解くときに活用できるかが問われる。昨年度同様、この大問の正答率は50%を下回っている可能性が高い。
大問3(日本地理) やや難
大問2と同様に絞り切れない受験生は多かったと思われる。昨年度から少し正答率が下がって、50%程度になると思われる。特に問1は、手掛かりとなる文からキーとなるヒントを拾うのが例年よりも難しい。資料中の「人口」を活用できたかどうかで正否が分かれるところだった。統計資料を「数字の羅列」として見過ごさないように意識したい。なお、当塾では都道府県・都市の人口上位は、ランキングと概数を覚えてもらうべくプリントを作成していた。そのことで、受験後の塾生からは多くの感謝の言葉をいただいた。ちゃんと頭に入れて入試に臨んでくれた塾生本人たちの「お手柄」であり、感謝されるまでもないことだと思うのだが、まさにこのような都立高校入試によくある問題を「一撃」で解く対策だったので、ずばり狙ったとおりの結果となった。
なお、論述問題は完全に書きやすい部類であり、過去問題等で演習を積んでいた受験生であれば満点をもらえる答案を作れる。
大問4(歴史) 標準
昨年度と比較して多少簡単になったようにも感じるが、ほぼ同等と見てよいだろう。この大問の正答率は50%程度を想定する。それにしても、「大正時代のできごとを選ぶ設問」が毎年のように出ている(「大正時代」であることは問題から読み取る必要)。近現代史の時代感覚を試しているのだろうが、ここまで毎年のように出題されるとさすがに受験生側も対策できているだろう。例年、この大問の正答率は低めで50%を下回ることが多いが、歴史の勉強を正しくできていれば満点を取ることは難しくない。
大問5(公民) 激易
問1・2は正答率90%程度が想定される。問3は資料中のフレーズを転記することで部分点の答案は最低でも作成したい。
論述以外は、大した勉強をしていなくても取れた問題であり、公民の学習を頑張った受験生には少し残念な(物足りない)問題であった。
大問6(総合) 難
この大問の正答率は最も低く、40%程度を予想する。
問1の世界のできごとの並べ替え問題は、近年大問6で定着している。産業革命・南北戦争は一昨年に出題歴があるためちゃんと学習している今年度受験生で戸惑う人はいなかったはずだが、オランダのアジア進出・東インド会社が頭の中の年表で処理できたかどうか。意外と厳しい受験生が多かったように思う。問2も大問2のように旧宗主国を把握していて活用できるか、他にもいくつかヒントを拾うことが求められ、複合的に解答にたどり着くにはいくつかハードルがある。問1・2ともに完答式の問題でもあり、30~40%の正答率を予想する。問3は「バブル経済=1980年代後半」が定着していれば難なく解ける問題である。しかし、これができない高校受験生が意外と多いことは模試・過去問題等の各種データで示されており、そこまで高い正答率にはならないだろう。